「主婦が輝く家」
2008年5月、髙島屋横浜店で中山忠彦画伯の「永遠の女神展」が開催されていた。
画伯は、40数年間、夫人をモデルとして着衣像を描き続けている。
会場に入った正面に掲げられた紹介文にこんなことが書かれていた。
「中山さんは、1972年に初めて渡欧し、骨董店でアンティークドレスを目にした。それ以来、良江夫人が試着をしてみて、絵になりそうなドレスは無理をしてでも購入してきたという。今から30年ほど前、イミテーションの真珠を身につけた絵を描いたところ、知り合いの宝石商から偽物と見抜かれた。大きなショックを受け、小物にいたるまでいっそうこだわりをもって収集するようになった。アンティークドレスや帽子などのコレクションは約300点。おそらく個人としては日本一のコレクターである」。
私は、強い衝撃を受けた。
何という鑑識眼を持った人がいるのだろう。
そこまで、中山さんの絵に注目し、絶対にごまかしは許さないという真剣なまなざしを降り注ぐ人がいる。
そして、その眼差しから逃げることなく全身全霊で自己を高める人がいる。
感動にひたりながら、ひととおり鑑賞して回ったその時、白髪の人が見えた。
私は直感的に画伯その人だと知った。
そして私は声を掛けていた。
「先生、ここに書かれていることは恐ろしいことですね」と。
画伯は静かに答えられた。
「まったくそのとおりです。宝石商でもあり画商でもあるその人は、言ってくれれば本物を貸してあげたのにと残念がっていました」と。
私は、入り口に戻り、一つ一つの作品を再度鑑賞し直すことにした。
すると、画伯と同様、ドレスの作成者が、どうやったら女性を美しく見せるかに掛けた執念の深さと、中山作品の見方が分かってきた。
美しい衣服は、着る女性の精神を高揚させ、人格を向上させると画伯は言う。
であるならば、「いい家」もまた主婦を美しくし、輝かせるはずだ。
画伯に負けずに、私は家づくりで女性を美しくしたい。
「主婦が輝く家」、ホームページのトップに掲げたキャッチコピーが思い浮かんだ瞬間だった。
- 新しい家のカタチ
- 「丁寧な仕事に敬意を払う文化」を破壊する人たち
- 純米酒と父と母
- 心の涙で泣く人間
- からだで感じ、からだで考えるならば
- ロボットが造る家
- 妻が喜ぶ家を
- 自足できる家
- 工務店にしか造れない家
- 91歳で建て替える
- ある精神科医の話
- 住み心地は百薬の長
- 色のある屋根
- 「明るくて広い部屋」
- 住み心地の保証
- 税金は軽くなるとしても
- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)