「あわてて決断、ゆっくり後悔」
2014年の世界保健統計によれば、女性の平均寿命87歳は世界一だそうだ。男性80歳は第5位。
高齢者になると、自分はいったいあと何年生きられるのだろうか、「生きる」ではなく「生きられる」かを心配する人は多い。
この問いに、「LIFE SHIFT100年時代の人生戦略」リン・ダグラットン/アンドリュー・スコット共著/東洋経済が答えてくれている。
寿命は、もうすでに100年の時代に入っている。しかも健康に生きられてだよ。長寿リスクに怯えていたのでは大損するぞ。80歳から一旗揚げることも十分可能だ、と。
この本を読んで勇気をもらったという人は多いそうだ。
それよりも、私はこの意見に賛同した。
<長く生きる時代には、自分と相性のいいものを見出す資質が極めて重要になる。
長寿化にともない、それによって影響を受ける期間が長くなる(中略)。悪い選択や判断ミスの弊害が大きくなる。(中略)長寿化時代には、ライフスタイルにせよ、キャリアにせよ、結婚相手にせよ、自分に最も合ったものを見つけることがとりわけ大きな意味をもつ。
自分と相性の悪いものを選択したり、早い段階で不適切な道に針路を定めたりした場合に失うものは多い。
「あわてて決断、ゆっくり後悔」ということわざは、100年ライフにはひときわ重要な金言なのだ。>
拙著<『いい家』が欲しい。>に、家づくりで大事なことは、人と人、工法とプラン、予算、工期の四つの相性を確認することだと書いたが、65歳を過ぎて相性の悪い、すなわち住み心地の悪い家と暮らすことほど損なことはない。
空気、暖かさ、涼しさには相性がある。体感ハウスに最低3度は訪れて相性を確認するといい。
住宅展示場で一目惚れして、「あわてて決断、ゆっくり後悔」の家づくりを選択するのは愚かなことだ。
健康に老いられるかどうかは、公衆衛生、啓蒙キャンペーン、生活習慣の改善によって決まると著者は主張しているが、住み心地の良し悪しが大きく影響することを付け加えたい。
- 新しい家のカタチ
- 「丁寧な仕事に敬意を払う文化」を破壊する人たち
- 純米酒と父と母
- 心の涙で泣く人間
- からだで感じ、からだで考えるならば
- ロボットが造る家
- 妻が喜ぶ家を
- 自足できる家
- 工務店にしか造れない家
- 91歳で建て替える
- ある精神科医の話
- 住み心地は百薬の長
- 色のある屋根
- 「明るくて広い部屋」
- 住み心地の保証
- 税金は軽くなるとしても
- 松井 修三 プロフィール
- 1939年神奈川県厚木市に生まれる。
- 1961年中央大学法律学科卒。
- 1972年マツミハウジング株式会社創業。
- 「住いとは幸せの器である。住む人の幸せを心から願える者でなければ住い造りに携わってはならない」という信条のもとに、木造軸組による注文住宅造りに専念。
- 2000年1月28日、朝日新聞「天声人語」に外断熱しかやらない工務店主として取り上げられた。
- 現在マツミハウジング(株)相談役
- 著書新「いい家」が欲しい。(創英社/三省堂書店)「涼温な家」(創英社/三省堂書店)「家に何を求めるのか」(創英社/三省堂書店)