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2008年5月8日
バイオ燃料が生物絶滅招く 多様性条約事務局が警鐘
二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないとして各国で急速に進むバイオ燃料の開発が希少な生物種の生息地を破壊、絶滅を招き、世界の生物多様性減少の一因になっているとの報告書を、生物多様性条約の事務局(カナダ・モントリオール)がまとめた。
報告書は「バイオ燃料生産の拡大政策を進める科学的な根拠はない」と現状を厳しく批判。十九日からドイツのボンで開く条約の締約国会議で、環境破壊につながらないバイオ燃料であることを認証する制度や国際基準づくりに向けた作業を進めるとの決議を採択するよう提案している。
報告書によると、原料作物の栽培方法によっては土壌中のCO2が大気中へ放出される量が増えるため、バイオ燃料の利用は温暖化防止に貢献するどころか、温暖化を加速させる恐れもある。
報告書は、トウモロコシやサトウキビ、アブラヤシなど現在のバイオ燃料の原料作物は天然の林や湿地、草地などを切り開いて生産され、生物の生息地を破壊して絶滅などを加速する危険性があると指摘。東南アジアなど多くの国で、既に森林破壊などを招いているとした。これらの作物を育てるために大量の水資源が必要で、淡水の生物の生息状況を悪化させるとの懸念も表明した。
バイオ燃料作物の栽培は土壌の劣化を招きやすく、自生地ではない地域にまで栽培が広がると、在来種に影響を与え生物多様性の消失を招く原因になると警告している。
バイオ燃料
トウモロコシやサトウキビ、アブラヤシを発酵させるなどして生産した燃料の総称。植物は大気中の二酸化炭素を吸収して育つため、石油などと違い、燃やしても地球温暖化の原因にならないとされる。
温暖化対策の進展や原油価格の高騰が原因となって、日本など各国政府が補助金制度を導入するなどして開発に力を入れているが、発展途上国での森林破壊を加速していることや食料価格高騰の一因になっているとの批判も高まっている。
東京新聞(夕刊)2008.5.2より