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2006年1月16日

環境ホルモン なお不透明

 環境省は2005年春、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の疑いがある67物質のリストを廃止した。「人が食事などから日常的に摂取している量では心配する必要はない」(環境安全課)と規制をやめた理由を説明する。

 メダカを使った実験では、合成樹脂の原料であるビスフェノールAやノニフェノールなど4つの物質で環境ホルモンの作用が確かめられた。だが、ネズミなど動物実験では悪影響を示す証拠は見つからなかった。高濃度のダイオキシンが体内に入った場合を除くと、成人男性の精子減少や男児の出生数の減少などの現象も確認できなかった。

 「化学物質は、人や生物のホルモンの働きを阻害するのではないか」という疑いが出て、環境ホルモン問題に火がついたのは1998年。この年、環境省は環境ホルモンの疑いがある物質のリストを公表し、調査研究に乗り出した。

 魚類やマウスなどを使った実験などでリストに載った物質には環境ホルモンの疑いがなくなったとして、環境省はリストを廃止。同時に「環境ホルモン戦略計画」を大幅に変更した。

 化学物質に環境ホルモン作用があるか否かを調べる試験は一部を除いて打ち切り、野生生物に対する影響や遺伝子や細胞レベルでの影響を解明する基礎研究を重視する計画に切り替えた。

 「環境省は証拠がないままに化学物質規制のリストを公表し、社会不安をあおった」と企業や光学系の研究者の一部は批判している。

 ただ、微量な化学物質によって遺伝子が影響を受けているという研究報告もある。化学物質に対する不安が完全になくなったわけではない。「影響をもう少し丁寧に調べる必要がある」と、日本内分泌攪乱化学物質学会の森田昌敏会長は指摘する。

 「化学物質に対する感受性には個人差がある。簡単に影響はないとは言い切れない」。こう主張するのは千葉大学医学部の森千里教授。森教授は化学物質の感受性を調べる検査方法を研究し、子や孫への影響を調査するプロジェクトを昨年から始めた。

 「環境ホルモン問題は終わった」とする雰囲気は漂っているが、科学的には不明確な部分がまだ残っている。


掲載:日本経済新聞 2006年1月15日

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