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2019年5月10日

「つながる街」へ協力

 トヨタ自動車とパナソニックが、住宅事業を統合することになった。自動車業界の激変期にあって異業種との「仲間づくり」を目指すトヨタと、「脱家電路線」を進めるパナソニックの思惑が一致した。

 「人々の暮らしを支えるすべてのモノ、サービスが情報でつながる。クルマを含めた町全体、社会全体という『コネクティッド・シティ』という発想が必要になる」。トヨタの豊田章男社長は9日、コメントを発表した。

 2019年3月期に国内企業として初めて売上高30兆円を突破したトヨタだが、業界を取り巻く環境変化に危機感を募らせている。自動運転や電気自動車(EV)の技術開発が進み、インターネットとつながるコネクティッドカーも急速に普及。「100年に1度の変革期」と言われる時代を乗り切るために、研究開発に毎年1兆円規模のお金をつぎ込むほどだ。

 20年代半ばには無人宅配や移動店舗として使える自動運転の大型電気自動車eパレットを投入する。パナソニックとの協業で先進的な住宅地域を共同開発し、そこで実用化する可能性も出てきた。トヨタの白柳正義執行役員は9日の会見で「(人が)移動しなくてもサービスがやってくる街づくりを実現する」。近くに店がなくても、自動運転車を使う事で快適に、便利に暮らせる地域社会の構築を目指しているとみられる。

 豊田氏は8日の決算会見で「これからは仲間づくりがキーワードとなる。1社だけでは何もできない」と強調した。昨年1月に自動車メーカーから「移動サービス会社」への脱皮を宣言。配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズに出資し、ソフトバンクと移動サービスの事業を手掛ける新会社も立ち上げた。パナソニックとの住宅事業統合もその一環だ。

 一方、パナソニックは「脱家電路線」を取り、住宅を成長の柱と位置付けてきた。戸建住宅の建築請負などを手掛けるパナホーム(現パナソニックホームズ)を完全子会社化し、中堅ゼネコンの松村組も買収した。だが、国内の住宅市場は縮小が見込まれる。パナソニックホームズの業績は堅調というが、「将来的には事業基礎の強化が避けられない」と判断。パナソニックの津賀一宏社長は9日の決算会見で、トヨタ側に住宅事業の統合を持ち掛けたことを明らかにした。

 統合によって、資材の調達や製造、営業支援業務などが一本化されるとコスト削減につながる。パナソニックの北野亮専務は「戦闘力と生産性を上げることが素早くできるかがポイントだ」と述べた。将来的には人口増が見込めるアジアを始め、海外での事業化を見据える。不動産開発や海外進出に知見がある三井物産の協力も得たい考えだ。

 新会社は住宅、建設、街づくりの三つの事業を推進。モノやサービスをネットワークでつなぐスマートシティーの拡大を目指す。いつ、どこで、どのような街を開発するのか。具体像を示すことが課題になる。     


      2019年5月10日 朝日新聞

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