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2018年2月1日

春秋

 飲食店を開業するとき、まず知っておくべき「方程式」があるそうだ。この広さなら何席できるか。店舗面積と席数の関係である。盛り場の不動産屋によれば、普通の居酒屋だと厨房を除いた坪数×1.5が無理のない席の数だ。高級店は乗数を1以下にするらしい。
 この方式にならうと、厚生労働省が喫煙を認める店の上限として示した「150平方メートル」のイメージがよくわかる。厨房が3割としてホール部分は100平方メートルほど、つまり30坪だから45席は取れる。4人がけテーブル8卓に10人あまり座れるカウンター。そこそこの広さだ。東京都内の店の9割がこれ以下に収まるという。
 星の数ほどある、こういう店を「小規模店」と見なして受動喫煙対策の対象外にするとは恐れ入る。既存店のみ、しかも「喫煙」「分煙」などの表示が前提というのが、許容される店がこれだけ多いのではどこまで歯止めになろう。当初の30平方メートル以下からずいぶん後退した健康増進法改正案、いや喫煙容認法案ではないか。
 かくも手ぬるくなったのは、もちろん自民党のせいだ。最も厚労省も高い理想を掲げておいてあっけなく転んだのだから、相当な無責任官庁である。ひょっとするとさらに緩めるために、店舗面積には厨房を含まず、などと言いたすやもしれぬ。永田町と霞が関の、骨抜きの方程式は常人の想像の及ぶところではない。


     2018年年2月1日 日本経済新聞

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