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2016年5月14日
「新耐震」でも崩れた
〜地盤弱い造成地も要因〜
震災への最大の備えは耐震化だ。建物が壊れたとしても、少なくとも人命は守ることを目的に、耐震基準は大地震のたびに強化されてきた。建物被害が目立った熊本地震は耐震化の重要さを改めて示すとともに、新たな課題も突きつけた。
耐震基準は1978年の宮城県沖地震を機に、81年に大幅に引き上げられた。それ以前の建物は、新しい建物と比べて耐震性が劣るものが多い。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合が全国約2万棟の耐震診断の結果を集計したところ、80年以前の建物の98%が震度6強以上で倒壊の可能性があると診断されたという。
熊本地震の被災地を調査した建築研究所の槌本敬大上席研究員は「揺れの大きかったと思われる地域では、土壁の家や、筋交いがない家はほぼ間違いなく壊れていた」と話す。台風に備えて屋根瓦を大量の土で固定した家も多く、耐震性の低い家では重みで倒壊する被害も多かった。
新基準も万全ではない。益城町の約200棟を調査した宮澤健二・工学院大名誉教授(耐震工学)によると、新基準で建てたとみられる住宅約120棟のうち約70棟が倒壊か大破し、被害は2000年以前の建物に集中していた。この年は、95年の阪神大震災を受けて、柱と土台、梁をつなぐ金具や、壁の配置に関する規定が厳格化された。「新耐震でも金具が不十分でないものがある」と言う。
さらに、日本建築学会九州支部が益城町で行った2600棟規模の調査では、2000年以降に建てられたとみられる木造家屋でも全壊したものが約50棟あった。
原因分析はこれからだが、木造の場合、震度7級の揺れで10センチほど変形し、耐震性能は3〜4割に落ちる。強い揺れの繰り返しが被害を拡大した可能性がある。また、造成した盛り土が崩れて倒壊したり、弱い地盤によって局地的に揺れが増幅されたりした可能性も指摘されている。
2016年5月14日 朝日新聞