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2016年1月28日
ヒートショック予防で注意喚起
消費者庁は消費者への注意喚起として1月20日、高齢者の入浴中の事故が冬場に多発していることから、入浴前に脱衣所や浴室を温めるなどの注意点を公表した。消費者庁は「入浴する際の身体状況や入浴の環境によっては、意識障害を起こし溺水する等重大な事故につながる危険性」があるとヒートショックによる事故について強調。その上で、人口動態統計を分析したところ家庭の浴槽での溺死者数が10年間で約7割増加し、平成26年に4866人となっていると指摘した。そのうち高齢者(65歳以上)が約9割を占めていることから、高齢者に特に注意することを求めている。消費者庁は注意点として?入浴前に脱衣所や浴室を温める?41度以下、湯につかる時間は10分までが目安?浴槽から急に立ち上がらない?アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控える?入浴する前に同居者に一声かけて見回ってもらう―の5点を挙げているが、冬場の入浴中の溺水事故は、居室と浴室・脱衣所の温度差によるヒートショックが原因の場合も少なくないと考えられる。ヒートショック防止のためにも住宅の断熱改修を積極的に進めていくことが求められる。
人口動態統計による家庭の浴槽での溺死率は平成16年からの10年間で約1.7倍増加。このうち約9割が65歳以上の高齢者が占め、75歳以上の年齢層で増加している。消費者庁は「高齢者人口が増えるに従い、入浴中の事故死が増えてきている」と分析。WHO(世界保健機関)によると、人口10万人当たりの高齢者65歳以上の溺死者数は、日本の19.0人に対して、フランス3.5人、アメリカ1.5人、イタリア1.1人、イギリス0.5人で「家庭の浴槽以外での溺死を含めても、日本の高齢者の溺死者数は欧米に比べ多くなっている」と指摘した。
厚労省研究班の調査では、救急車で運ばれた患者から推計した入浴中の事故死の数は年間約1万9000人(死因が溺死以外の疾患などと判断されたものを含む)。入浴中の事故死は冬期に多い。消費者庁は入浴中の事故死の数と気温に相関がみられるという報告もある。入浴中の事故は、ほとんどが浴槽内で起きており、熱い湯に肩までつかるという日本固有の入浴スタイルが影響していると考えられている。既住症のない人の事故や、原因がはっきりしない事例も見られることなどから、5つの注意点に気を付けることを促している。
消費者庁が行ったアンケート調査によると、持病が無い普段元気な人でも入浴事故が起こることを知っている人は34%にとどまるなど、入浴事故のリスクが十分に周知されていない。安全な入浴方法の目安の「41度以下で10分未満で上がる」を守っている人は42%、浴室などを温める対策を全く実施していない人も36%存在する等、「消費者の安全対策が不十分」な現状が浮き彫りになった。冬の寒い日でも浴室や脱衣所の防寒を何も行っていない人が36%にのぼることを踏まえれば、暖房器具を使用することだけでなく、浴室や脱衣所を断熱改修することも効果的であることがうかがえるといえるだろう。
アンケートは27年12月に55歳以上の男女3900人にインターネットで実施した。
2016年1月25日 日本住宅新聞