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2015年2月24日
断熱改修は健康に良い影響
住宅の温熱環境の改善が高齢者の健康に良い影響を与えることを、一般財団法人ベターリビングの健康長寿住宅エビデンス取得委員会が実証した。高齢者が日中の大半を過ごす居室の窓と床を部分断熱改修し、高齢者の健康指標で代表的な「血圧」の動向に着目。部分断熱リフォーム前後で、血圧の低下や起床後の血圧上昇が制御されることが分かった。高橋龍太郎委員長は「断熱改修は省エネだけでなく、高齢期の健康面にも有用」として、比較的費用負担の少ない部分断熱リフォームの普及につなげる。
実証実験は、築20年以上の戸建住宅に住む60歳以上の居住者を対象にした。日中の過半を過ごす居室を部分断熱改修し、改修前後の健康指標を計測し、健康への影響を調査した。
2011年度から14年度までの4年間で、計39棟、延べ53人の居住者の健康状態を測定した。対象住宅の概要は、木造軸組工法が中心で平均築年数は33年。ほぼすべての窓がアルミサッシ・単板ガラス、68%が無断熱の床だった。これを、断熱改修によって現行の省エネ基準程度まで高めた。
高橋委員長らは居住者の血圧に着目。血圧は最も重要な心・脳血管疾患のリスクで、転倒や入浴死に大きく関与している可能性があるからだ。居住者の血圧を24時間計測し、改修前後の血圧の状態を比較した。調査結果では日中の収縮期血圧と平均血圧の低下、起床後の血圧上昇の制御が確認された。「既存住宅の断熱化が高齢者の健康寿命を延伸させるためにも有効であることを科学的に証明した」(同委員会)と成果を説明する。
同委員会は建築系と医療系の学識経験者と民間企業の7者で構成する業界横断の組織で、11年度から活動を開始した。
日本の死者数は、冬に多く夏に少ないという季節変動がある。特に、寒さが厳しい1月が最も多く、6月の約1.3倍。また、1月と12月は入浴中の心肺停止事故が増え、その数は最も少ない月(8月)の約5倍に膨らむ。
季節によって死者数が大きく変わるのは、世界でも珍しいという。医療分野では20世紀半ば頃から「死者数の季節変動は住環境によるものではないか」という推測はあったものの、今回のような大規模な実証実験を行い、医学的に検証することはなかった。「これまで、医療と建築は接点がほとんどなかった。今回の実証実験は画期的な事」(高橋委員長)と、説明。「暖かい住宅は高齢者の健康にも良い」ことをアピールする。
2015年1月29日 住宅産業新聞