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2013年8月18日
ケア付き住宅 移転支援 〜転居前市町村 介護費を負担〜
高コスト施設 増加抑制
政府は高齢者向けの介護サービスを、自宅にいたまま世話をする「在宅型」中心の仕組みに改める。大都市郊外でケアサービス付き賃貸住宅の整備を加速。同住宅に引っ越した高齢者の介護・医療費を、転居前の市町村が負担する仕組みを2015年度にも導入する。特別養護老人ホーム(特養)など高コストの介護施設の増加に歯止めをかけ、財政負担の膨張を抑える。
政府の社会保障制度改革国民会議は6日に公表した報告書で「病院・施設から地域・在宅へ」との方針を打ち出した。これを受け、厚生労働省は介護保険法を含む関連法の見直し作業を本格化。14年の通常国会に改正法案を提出する。
介護保険の対象は、約50万人が入居する特養ホームなどの施設介護が主流だった。だが、特養1人あたりの給付費は月27万円前後で在宅サービスの約3倍になる。介護給付膨張を回避するため、在宅型の一種であるケア付き賃貸住宅の向こう10年で現在の5倍超の60万戸整備する方針だ。
建設促進の一環として、同住宅に引っ越す人の介護・医療費用を転居前の自治体が負担する特例を導入する。高齢者の転入に伴う介護・医療費負担で財政悪化が進みかねず、住宅の建設許可に消極的な市町村もあるためだ。
市町村間の負担が偏らないようにする「住所地特例」は特養ホームなどに適用してきた。この特例をケア付き賃貸住宅にも適用する。都市部の空き家を転用したケア付き住宅も整備し、あわせて100〜180万戸の住宅の受け皿を整える。
在宅中心の介護サービスの仕組みを作る一方、症状が軽い人の特養への新規入所を認めないよう15年度から基準を厳しくする。これらの政策を進めることで、施設介護を中心とする介護保険運営の見直しを急ぐ。
65歳以上の高齢者は現在約3000万人だが、2025年には3600万人超に増える。現状のままの介護保険運営を続ければ給付費は11年度の約7兆6千億円から25年度には2.6倍の約20兆円に膨らむ。
厚生労働省は財政悪化の主因である社会保障給付の抑制を探っている。ただ、今回の介護保険見直しだけでは給付効率化に不十分との見方も根強い。医療や年金を含め高齢者向け給付を見直し、現役世代の負担増を抑制する政策の強化は今後必要だ。
2013年8月18日 日本経済新聞