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2013年7月13日
排泄ケアが老後を変える
京都・二条城に近い住宅街に「むつき庵」はある。400種類のオムツやポータブルトイレなど排泄関連用具を展示し、相談に応じる情報館だ。浜田きよ子さん(63)が開いて、11月で10周年を迎える。
浜田さんには27年前の苦い思い出がある。入院中の母がベッドで足を踏み外したのを機に病院からオムツを勧められ、嫌がる母が使い始めてから容態が悪化。69歳で亡くなった。「因果関係はわからないけれど、生きる気力をなくしたのだろうか」と悔いが残った。
浜田さんは老いても自分らしく生きる方法を考える中で福祉用具のマニュアル作りに参加し、1995年には個人で高齢生活研究所を開いた。介護などの相談で多かったのが排泄の問題。尿漏れを恐れて外出できなくなった人、オムツやパッドの装着の仕方が悪くて不眠になった人・・・。排泄は暮らしの基本なのに情報が少ないと痛感し、オムツメーカーなどに声をかけて、むつき庵を開いた。
オムツの装着や排泄ケアを指導して「オムツフィッター」に認定する研修事業では、入口の3級受講者が医師や看護師、介護士から一般の人まですでに3500人に上る。2級以上の取得者が開ける「ミニむつき庵」は東京や静岡、新潟など22か所に広がった。
オムツの正しい装着で明るさを取り戻したり、オムツがいらなくなって尿意が回復した高齢者もいる。ある特別養護老人ホームで排泄ケアを取り入れたところ、亡くなる前に「お尻が気持ちよかった」と感謝した98歳の女性もいたという。
「排泄ケアが変われば、生活も介護も変わります」と浜田さん。高齢化が進み、むつき庵が一層必要とされていると感じている。
2013年7月13日 日本経済新聞 夕刊