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2013年4月16日
仮設住宅 もう老朽化
福島6市町村天井はがれ、床沈む
住民、耐久性に疑問の声
東京電力福島第1原子力発電所事故で建設された福島県内の仮設住宅で早くも老朽化が目立っている。避難指示の出た県内11市町村のうち6市町村で年月を経たことによる損傷を確認。天井がはがれたり床が沈んだりするなど生活に支障となるケースも出ている。復興の遅れから国は入居期間の延長を可能にしたが、住民からは耐久性に疑問の声も上がっている。
「ビー玉を床においたらすっーと転がった。どう見ても傾いている」。原発のある福島県大熊町から会津若松市の仮設住宅に避難するナシ農家の片倉荘次さん(64)は訴える。部屋の畳は日がたつにつれ沈みが目立ってきた。会津若松市では今年、寒波により連日の大雪を記録。片倉さんは「屋根に積もった雪の重みで傾いたのではないか」と話す。
阪神大震災では仮設住宅の解消に5年を要したが、片倉さんは「5年なんて住めない。早くきちんと生活できる場所を作ってほしい」と話す。
原発事故により警戒区域と計画的避難区域に指定された県内11市町村のうち、経年劣化による損傷を確認したのは6市町村に上る。
「床が沈んだり、天井がはがれてきたりする例があった」(浪江町)、「木材の収縮で壁に隙間があき、自張りをする応急処置をしている」(飯舘村)など居住空間に問題があるケースが目立つ。また「外玄関の木製の階段が腐って穴が開いた」(双葉町)、「敷地内の歩道の舗装が隆起したりはがれたりした」(田村市)など外部の構造物の劣化を挙げた自治体もある。
津波により避難する福島県新地町では3月、仮設住宅のもろさを印象付ける事故が発生。トタン屋根4枚が強風で飛び、近くの仮設住宅や駐車中の乗用車にぶつかった。けが人はいなかったが、屋根の飛んだ仮設住宅に住んでいた3世帯11人が移転を余儀なくされた。
災害救助法に基づく仮設住宅の維持・修繕は県が担う。県から委託を受けて簡易な修繕を手掛けているNPO法人「循環型社会推進センター」によると、受託開始の2011年10月当初は月当たり約50件の維持・修繕工事だったが、最近は月300件前後に増加。担当者は「メーカーによって経年劣化の程度は違うものの、今後さらに不具合が増える恐れがある」と指摘する。
事態を受け県は13年度中に、老朽化の実態を把握するため入居者のいる全仮設住宅を一斉点検する方針で「今後業者の選定方法などを検討していく」としている。
2013年4月16日 日本経済新聞