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2012年9月26日

被災地の建設業 業績が急降下

 東日本大震災後の復興の担い手である東北の建設業の業績が急降下している。東北財務局の調査によると地元建設業全体の経常損益は20133月期に赤字に転落する見通し。一斉に始まった復興工事で人や資材が不足して建設費が高騰、受注していた公共工事などの見積費用と見合わなくなったためだ。地元の建設会社の経営を圧迫しており、復興の足かせになる懸念も出ている。

 「職人と資材の奪い合いだよ」。仙台市の元請け建設会社、深松組の深松努社長は言う。現場では資材不足が顕在化し、工期が遅れるケースも出てきた。東日本建設業保証の調べでは同社が前払い金保証した今年48月の東北地方の公共工事は9434億円と前年同期の約2倍。だが公共工事は単年度執行が基本。期限付きの特需に建設会社は不足する人や資材の争奪戦を繰り広げている。

 各社が全国から職人をかき集め、資材不足で遅れた工期を取り戻そうと残業を増やす。採算をさらに悪化させる悪循環も生じ、「売上高が増えても赤字の案件が出ている」(深松社長)。

 東北財務局によれば大手ほど厳しい。専門の職人を抱える下請け建設業者は比較的堅調だが、経費の上昇分を発注者側に転嫁しきれない元請け業者の業績悪化が顕著だ。

 国や県は原価高騰分を補する仕組みを導入した。だが、建設会社幹部は「日々変化する単価上昇のスピードを反映し切れてない」と漏らす。

 復興工事の採算悪化は大手ゼネコンにも及び始めた。フジタの金子賜常務執行役員は赤字案件が出始めているとし、「東北の人不足を起因とする原価上昇は全国に波及している」と明かす。清水建設の柿谷達雄副社長は「除染作業や廃棄物処理など経験がない事業が多く、正直見通しがつかない」と不安を訴える。

 道路や堤防の復旧や住宅再建といった復興工事は今後、さらに増加する見通し。既に多くの現場で不足が指摘されている生コンクリートの需給もさらに逼迫する。

 宮城県では1314年度に12年度比5割増となる300万立方メートルの生コンが必要となる見込みだが、供給のメドは立たない。県北部の気仙沼地区の需要は最大で供給力の3倍超に及び、需給バランスの悪化がさらなる価格上昇を招く恐れもある。

 生コン業者のかじ取りも難しい。気仙沼地区生コンクリート協同組合(気仙沼市)は供給拡大へ2工場の新設を決めた。だが宮城県生コンクリート工業組合の高野剛理事長は「4年後には復興需要は完全になくなる。設備の償却ができるのか」と不安を口にする。

 震災前まで公共工事の減少が続き、規模縮小を迫られてきた東北の建設・建材業界。短期集中の特需が混乱を呼ぶ。

 「建設費が上昇しても出来上がるモノは同じ。今の工事は非常に効率が悪い」と国交省職員は漏らす。復興に向けインフラ復旧は急務だが、施工能力に沿って、工事の優先順位を見極めていく取り組みも必要となる。(震災現地取材班)

2012年9月21日 日本経済新聞

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