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2012年6月4日
太陽光発電、電力会社以外にも売れるの?
東京都世田谷区にできたばかりのマンション「ザ・パークハウス三軒茶屋タワー」(30階建て)では、エレベーターなど共用部分の電気に、屋上にある5キロワットの太陽光発電の電気を使っている。マンションを分譲した三菱地所レジデンスが設置した。
普通なら住民はレジデンスに電気代を払うが、ただでいい。レジデンスが「グリーン電力証書システム」で収入を得ているためだ。
この仕組みは、二酸化炭素(CO2)が出ない太陽光発電の環境への貢献度を「グリーン電力証書」にして企業などに売る。このマンションでは、親会社の三菱地所が1キロワット時(kWh)あたり10円と評価して証書を買っている。
三菱地所は多くのビルを持つが、屋上で太陽光発電をするのは限りがある。レジデンスのマンションから証書を買うと、それだけCO2排出削減をしたとみなされる。削減目標を達成するためにお金を払うのだ。
この仕組みは、一戸建て住宅の屋根を使った太陽光発電でも使える。
家庭の太陽光発電は自宅で使い、余った電気を電力会社に売ることしかできない(余剰買い取り)。余れば、電力会社には1kWhあたり42円で売れる。
一方、電力会社から買う電気は1kWhあたり二十数円。太陽光発電の分をすべて電力会社に売り、自宅で使う分を電力会社から買えば、もっと得をするのだが、制度上はできない。
そこでグリーン電力証書が使える。自宅で使った太陽光発電の分も証書にすれば売れるのだ。NPO法人「太陽光発電所ネットワーク」(東京都文京区)は、家庭向けに証書の発行や販売の仲介をしている。こうした事業所は多くあり、それぞれが証書の価格を決めている。太陽光発電所ネットワークでは1kWhあたり7〜8円だという。
証書を買うのは生活協同組合や自治体、企業など。総代会や温暖化対策のイベントなどを開く際、そこで使う電気分ほどの証書を買い、CO2排出削減に役立てるようにしている。
ただ、最初は証書が売れるまでに2年ほどかかるかもしれない。証書発行には専用の電気メーターをつけ、自宅で使った太陽光発電を正確に測れるか確認しなければならないし、証書を買う企業が見つからない可能性もあるからだ。
太陽光発電所ネットワークではメーターなどの設置の費用が数万円、証書の収入が年間1万円ほど。参加者は約2千人いるという。(松浦新)
平成24年6月2日 朝日新聞(朝刊)