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2012年2月6日
ナノ材料 安全性調査 ―吸収、悪影響の指摘―
日用品に広く使われているナノ材料について、国は、製造現場で作業員への安全性を調べ、規制が必要か検討する。また、一般の人がどの程度、体内に取り込み、健康への影響がないのか調べる。動物実験では、発がん性や胎児への影響を示す結果が相次いでいるためだ。
ナノ材料は一般的に、直径が100ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の物質をいう。工業製品や化粧品、食品、医薬品などに使われている。
一方で近年、動物実験ではナノ材料の安全性を疑わせる結果が相次いでいる。
国立医薬品食品衛生研究所などは2008年、カーボンナノチューブを腹に注射したマウス16匹のうち14匹が、がんの一種の中皮腫になったと発表した。アスベストと形が似ていることが影響すると指摘された。
大阪大の堤康央教授(毒性学)らは昨年、70ナノメートル以下の二酸化チタンやシリカを妊娠しているマウスの尾に注射すると、粒子が胎盤や胎児の脳に入り、胎児の体長や体重は通常より約1割減、流産も増えたとの実験結果を発表した。
人がナノ材料を大量に注射されるような状況は普通ありえない。ただ堤教授は「現代の生活ではナノ材料に触れずにはいられない。人が体内に取り込む量を調べ、リスクをはかる必要がある。粒子の表面を加工するなど、安全な材料の開発を進めるべきだ」と話す。
国内外で、大量のナノ材料にさらされる可能性のある製造現場の作業員への健康影響のほか、一般の人がどの程度、ナノ材料を体内に取り込むのか、感心が高まっている。
産業技術総合研究所・中西準子フェローらは、動物実験から人へのリスクを評価した。5年間で約20億円をかけ、数種類のナノ材料をラットに4週間吸わせるなどした。肺に沈着する速度と炎症の程度から、人が70年間生きた場合に許容できる空間中のナノ材料の濃度を算出、昨年発表した。
産総研によると、ナノ材料の製造現場では空気中からこの数倍の粉じんが検出されることもある。各企業が独自に対策をとっているが、統一基準づくりを望む声は産業界にもある。
このため、厚生労働省は来年度以降、二酸化チタンやカーボンナノチューブなど5種類について、ナノ材料自体や、ナノ材料を使った製品を作る作業員が現場で浴びる量を調べる。生涯の労働時間で浴びる量の推計や動物実験の結果も加味し、健康リスクを判断する。経済産業省は一般の人が生涯でナノ材料に触れる機会がどのぐらいあるのかを調べ、6月ごろに中間とりまとめを出す予定だ。
平成24年2月6日 朝日新聞(夕刊)