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2011年9月4日
太陽電池 変換効率向上へ研究開発進む
太陽光発電は、環境負荷が小さく、国内のエネルギー自給率を高められる発電技術としてこれからの大規模な普及が期待されている。同時に、海外競争力を持つ産業として成長させるため活発な技術開発が行われている。現在の技術開発の課題の中では、エネルギー変換効率を現状の14〜18%からさらに高めることが特に重要になっている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2009年に公表した技術開発指針「太陽光発電ロードマップ」には、20年に変換効率で20%を、50年には40%を目指すとある。これが実現すれば同じ出力の太陽光発電に必要となる面積は現在の8割から4割になり、価格低下に加えて狭い屋根などへの設置も可能になる。
現在、主流のシリコン半導体は理論的には最大の変換効率が27%である。研究レベルで世界最高の変換効率は24%と限界が見えている。従って、別の化合物半導体による太陽電池の開発に加え、複数の材料を積層させた「タンデム型」、微細な半導体粒子を使う「量子ドット型」、太陽光をレンズで集める「集光型」などが開発中である。
現在、3キロワットの出力を持つ太陽光発電は新築住宅であれば約90万円(補助金が利用できると約75万円)で設置可能である。今後の研究開発で将来、日本の住宅の大半に太陽光発電が設置されるようになるだろう。
一方、50〜100年後に向けては、現在のような小型分散の太陽光発電だけではなく、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の導入も検討されている。太陽光発電はその出力変動により電力網が不安定化するのを緩和する必要があり、メガソーラーではその制御を集中的に行いやすい。一方、デメリットも多い。設置場所から家庭への送電ロスが生じることや、メンテナンスは必要であるものの継続的な地域雇用につながりにくいこと、広範な土地とその土地代が必要であることなどである。そのあり方については慎重な議論が必要であろう。 (九州大学教授 古山通久)
平成23年9月2日 日本経済新聞(朝刊)