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2009年8月31日
リフォーム市場は“レモンの市場”?
「レモンの市場」という言葉を知っているだろうか。経済学のお堅い感じはないが、アカロフという経済学者の論文のタイトルだ。ここでいうレモンとは、米国の俗語で「質の悪い中古車」を意味する。外見はオレンジに似ているが中身は酸っぱくて食べられないという欠陥品をレモンに例えており、米国では中古車は欠陥品が多いとの認識が一般的だからだ。この論文では、売り手が買い手に対して、積極的に情報を提供しなければ、やがてその市場が崩壊することを証明している。この研究でノーベル賞をとったので、いろいろなところで引用されている。
アメリカでは中古車は故障が多く、良い中古車がない。その原因を売り手が中古車の品質が良いか悪いか知っているが、買い手には品質を判断する情報がないことからだと指摘する。こうなると、買い手は欠陥品であるとの疑念が高まり、中古車を欠陥品であることを前提に安い価格でしか購入しなくなる。すると、高い価格で売れないため、質の良い中古車が市場に出回らなくなるため、市場はますます欠陥品であふれ、ついには買い手が付かなくなって、市場が崩壊するというものだ。
住宅市場、特にリフォーム市場は「レモンの市場」となる危険をはらんでいる。売り手(供給者)であるハウスメーカーや工務店と、生涯に数度しかリフォームをしないユーザーとでは、情報の差は圧倒的だ。悪質リフォームが社会問題化するなかで、「一部の悪徳業者の所業」と放置しておけば、欠陥品をつかまされるとのユーザーの疑念は拡大するばかりだ。
ストック化が進み、新築が厳しくなる中で、これからの成長が期待されるリフォーム市場。「レモンの市場」にして、成長市場を失わないためにも、事業者からユーザーに対して積極的な情報提供をするべきだろう。
2009.8.26 住宅産業新聞