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2007年5月12日
微小な粒子、健康被害の恐れ 環境基準を検討「PM2.5」とは?
大気汚染を抑えるため、環境省が「PM2.5」という物質の環境基準設定に乗り出す。
PMは英語の「ParticulateMatter(粒子状物質)」の略で、空気中を漂っている物質の一種。微細な土ぼこりや水滴など自然なもののほか、車や工場から出る排ガスの細かな粒子がこれにあたる。2.5は大きさで、2.5マイクロメートル(1マイクロメートルは1千分の1ミリ)以下のPMを規制しようという話だ。
PMの環境基準は1972年、10マイクロメートル以下のもの(PM10)について定められた。全国の測定局で測る大気中の濃度をみると、かなり改善している。しかし、海外の調査や研究で、10マイクロメートルほどの物質と2.5マイクロメートル以下では、健康に与える影響の違いがありそうだとわかってきた。
比較的大きければ鼻毛や気管、気管支のあたりで引っかかり、喘息や慢性気管支炎などの原因となる。一方、PM2.5は気管支をすり抜けて肺の奥深くまで達する。この大きさのPMはディーゼル車の排ガスなど化学物質でできている事が多く、呼吸器系疾患に加えて肺がんや循環器系疾患を引き起こすと疑われている。だから別に基準を定めて測定して、より焦点を絞った対策をとれるようにする。
これまで規制されなかったのは、吸入と健康被害の因果関係がはっきりしていないためだ。日本では、環境省が2000年からPM2.5について疫学調査や動物実験などを続けている。今回、基準設定を検討する事になったのは、調査データが集まってきた事と、欧州連合(EU)も基準設定に動き出すなど機運が高まってきた事が大きい。
基準を超えたらすぐに健康被害が起こるわけではない。いわば行政の目標で、健康や生活環境を守るため、国や自治体がこの値以下に抑えるよう対策をとる事になる。東京大気汚染公害訴訟で原告の喘息患者らがPM2.5の基準設定を求めてきた。これも後押しになった。
朝日新聞 2007年5月8日