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2007年2月18日
温暖化報告書 京都議定書超える実効性必要
地球が温暖化に向かって最悪の道を歩んでいることはもはや、疑う余地がないようだ。このまま石油などの化石エネルギーに依存する社会が続くと、今世紀末の地球の平均気温は最大で6.4度の上昇が予測されるという。
このことは地球温暖化に関する世界の研究者らでつくっている「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の作業部会がこのほどまとめた第4次報告書で指摘された。
人類が生き残っていくためには京都議定書のレベルをはるかに超えた実効性が必要だ。だが、今回の報告書はその時間がかなり限られていることを示していると言わざるを得ない。
■今世紀末6.4度上昇■
第4次報告書によると、この100年間で地球の気温は0.74度上昇した。この「たったの0.74度」の温暖化で最近は世界の多くの人々が実感できるほど、自然災害の激化が始まっている。これが今世紀末までに予測される最大で6.4度も上がったらと思うと、空恐ろしいことだ。
報告書では気温や海水温の上昇、氷や雪の融解、さらに海面の上昇などから気候の温暖化は明白としている。この温暖化は人為的な温室効果ガスの排出によって起きている可能性がかなり高いとして、報告書は一部に残る懐疑論を明確に否定した。
また過去50年間、寒い日が減少したのに、暑い日や熱波の頻度は逆に増し、さらに干ばつが長期化する一方、豪雨の頻度も増したとし、温暖化の影響が出始めたことを初めて認めた。
温暖化で危惧(きぐ)されるのは自然災害の激化だけではなく、大規模な水不足や農業への影響、感染症の増加などがあり、これらの悪影響が単独ではなく、複合的に起きてくる可能性が高い。
温暖化による海面の上昇の点からみても、私たちが危ういところにいることが分かるであろう。
■米国と中国巻き込め■
深刻に懸念されているのはグリーンランドを覆っている氷が解け始めていることだ。北極海の氷と違い、陸の上にある氷であり、解けると氷河などとともに海に流れ込む。その結果、海面が上昇する。
現在の気温があと1度少々上がると、この氷が急速に解け始める恐れがある。氷が全部海に落ち込めば、海面上昇は6―7メートルにもなるという。
日本は京都議定書で、1990年を基準にして、温室効果ガスを6%減らす義務を負っており、来年からは実際に削減の実行期間に入る。
ところが、日本は温室効果ガスを減らすどころか、増えるばかりで抑えることができないのが現状だ。京都議定書で実行されようとしている地球温暖化防止計画の実効性も頼りない。私たちは相当に思い切った対策を早急に実行していかなければならない。政府をはじめ、産業界もこのことを肝に銘じなければならないだろう。
今回の報告を受け、中央環境審議会会長の鈴木基之・放送大教授ら日本の科学者15人も「子どもたちと人類の未来を守るため、気候の安定化に向けて直ちに行動を」と、緊急メッセージを出している。
温暖化は私たちの予想をはるかに超えるスピードで進行している。京都議定書を認めず、削減義務がない米国と中国だけで世界の温室効果ガス排出量の4割を占めている。この2カ国を巻き込んだ対応が緊急だ。
〔宮崎日日新聞〕 2007年(平成19年)2月15日