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2020年4月4日

コロナ後の世界への生き残り

 新型コロナウイルスの感染が広がり経済が収縮、2020年は戦後最悪の世界不況に見舞われる公算が大きくなった。今は、会社をつぶさず、生き残ることが最優先課題だ。一方で感染が収束して景気が回復しても、コロナ後の世界は元の姿には戻らないことに注意が必要だ。コロナ危機は大規模な社会変革の引き金を引いた。コロナ後の経済構造は、以前とは別の姿になると認識すべきだ。
 感染が広まる中で事業を続けるため、在宅勤務やビデオ会議などのリモートワークが世界に広がった。「やってみたら意外に使える」「生産性が上がった」などと実感した企業が少なくない。オフィスなどに出社が必要な働き方や、対面でのサービスが必ずしも不可欠ではないことがコロナ禍によってあぶり出され、業務の進め方を見直す契機になっている。
 オンライン学習や遠隔診療の導入、ネット上での株主総会といった動きも各国で見られる。こうしたデジタル技術を生かした変革は、これまで必要性が叫ばれながら、常識や因習にとらわれてなかなか進まなかった。だがコロナ危機によって社会変革の口火は切られた。
 非常時の対応として導入された在宅勤務や遠隔診療などは、平時に戻った後も一部に定着するだろう。コロナ後の世界では、デジタルシフトが加速して新たなスタイルの需要が広がる一方、従来の消費や生活活動は「断捨離」されて、縮小してしまう可能性がある。
 「不況が来たので、改革は後回しで、身を縮めて嵐が去るのを待つ」姿勢では、コロナ後の世界を生き延びることは難しい。未曽有の不況だからこそ、眼下の構造変化を見逃さず自ら変革に着手することが生き残りへの最善の策となる。


筆者:東レ経営研究所 エグゼクティブエコノミスト 

   増田 貴司さん


     2020年4月3日 日本経済新聞夕刊

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