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2015年12月5日
太陽光踊り場 体力勝負
〜7月から9月パネル出荷26%減〜
太陽光発電の拡大にブレーキがかかっている。太陽光発電協会が26日発表した7〜9月の太陽光パネルの国内出荷量は前年同期比26%減となり、2015年度累計でも前年割れの公算が大きい。すでに撤退を選んだメーカーもある一方、パナソニックなどの大手は海外や国が普及を後押しする「ゼロエネルギー住宅」といった新たな需要の開拓を急ぐ。体力勝負の様相が強まっている。
太陽光パネルの国内出荷量が落ち込んだ要因は企業や個人の設置意欲が減退したためだ。九州電力が発表した太陽光発電の買い取り制限を受け、14年秋以降、三大都市圏を除く全国で電力会社が電力需要の少ない日時に太陽光の買い取りを制限する「出力抑制」への懸念が高まった。
「出力抑制というたった一言に不安を感じ、パネルの購入を見送る例が目立ってきた」。大手メーカーの幹部はこんな恨み節を漏らす。実際、パナソニックのエナジーシステム事業部、吉田和弘ソーラービジネスユニット長は「遊休地を持つ個人投資家の需要がぱったりなくなった」と話す。
7〜9月の動向をみると、大規模太陽光発電所(メガソーラー)向けは前年並みを維持したものの、工場や事務所の屋根に設置する用途は半減。出荷量の2割を占める住宅用は31%の大幅な落ち込みとなっている。需要の減少に加え、ここ1年でパネルの市場価格は1割下落。競争環境は厳しさを増している。
12年7月の再生エネルギーの固定価格買い取り制度導入をにらみ、10年代の前半はパネル生産への参入が相次いだ。しかし、中国や韓国から割安なパネルの流入が増え、新規参入組などは苦戦を強いられてきた。11年に参入したノーリツは15年末に家庭用パネルの生産から撤退。パネル架台メーカーのネミー(東京・目黒)も8月末、13年4月に設立した製造子会社の工場を閉鎖している。
太陽光の買い取りでは当初、税抜単価が1キロワット時40円だった。3年の優遇期間が終わり、現在は27円と3割下がっている。単価の引き下げを見越し、14年度末には発電所新設のための認定取得申請は13年度末の3分の1に減少。
(中略)
国内市場では20年に新築住宅の5割を占める見通しのゼロエネ住宅に照準を定める。
住宅から出る年間のエネルギー消費量を「実質ゼロ」にするゼロエネ住宅では太陽光発電が不可欠になる。パナソニックは16年春の稼働に向け、国内工場の増産投資に踏み切った。ソーラーフロンティアは国内の住宅用に新設した東北工場(宮城県大衡村)を16年から本格稼働させる。パネルメーカーの生き残りを賭けた戦いが始まった。
2015年11月27日 日本経済新聞