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2015年3月5日

断熱で健康寿命を延ばす

 厚生労働省の人口動態統計によると、交通事故による死者は過去10年ほどで約半数に減っているのに対し、住宅内での不慮の事故でなくなる人は増加傾向にあります。なかでも溺死など浴室での事故は深刻で、入浴中の心疾患や脳血管疾患などが原因で病死した人を含めると、実に交通事故死の3倍以上にあたります。
 浴室まわりの事故は、暖房の利いた暖かい部屋から寒い浴室に移動するなど、急激な温度変化によって引き起こされるケースが多く見られます。いわゆるヒートショックと呼ばれるもので、急激な温度差が血圧や心拍数の乱れを引き起こし、命に関わる危険な状態を招くのです。
 また、熱い湯に長くつかると熱中症のような状態になり、意識がもうろうとして湯船から出られなくなるケースも少なくないとの推察もあります。でも、寒い家に住む人は、熱いお湯につかりたいでしょ?住まいの断熱性を高めることが循環器系疾患のリスクを減らすことにつながるといえるのです。
 実は、冬に循環器系疾患で亡くなる人は、北海道や北陸といった寒い地域よりも、四国や東海といった暖かい地域に多くみられます。これは、温暖な地域ほど高断熱の住宅が少なく、冬に住宅内温度差が10℃以上で、血圧の高い人が多いことが280軒の実測調査で分かっています。
 住宅内温度差というと、わずかな差に思えますが、室温が10℃下がると血圧は平均4ミリも上がることが分かってきました。また、断熱性の低い家では、とくに冬場、布団の中と外の気温差が大きいため、起床時に心拍数が急激に変化しやすいことも分ってきています。さらに、部屋の中に10℃の温度差があると、部屋から部屋への移動が減るというデータもあります。歩く量が減れば筋力や運動神経が落ち、ちょっとした段差でもつまずきかねません。部屋の寒さは、様々な悪影響をもたらすのです。


  〜家全体を暖めることが疾病の予防につながる〜
 こたつやストーブなどで局所的に暖を取ってきた日本では、「冬に部屋が寒いのは当たり前」という考えが根づいてきました。ところが、そこには大きなリスクが潜んでいました。これからの家づくりに必要なのは、家全体を暖めるという発想です。
 今は様々な断熱材が出ていますし、窓を二重にしたり、高機能ガラスを選んだり、熱を伝えにくい窓枠にしたりするだけでも断熱効果は高まります。長く健康的に住み続けられる家は、健康寿命を延ばすことにつながります。それは、子供にも高齢者にも大きなメリットがあるといえるのです。
(慶応義塾大学理工学部システムデザイン工学科 教授  伊香賀俊治さん)
     

      2015 年3月5日  朝日新聞

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