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2013年12月4日
増税反動、前回より小幅
「極端に落ち込むことはないだろう」。大和ハウス工業の大野直竹社長は足元の注文住宅の受注減速にも冷静だ。10月の受注額は前年同月比7%増と、9月(同35%増)までの勢いが鈍った。
政府は来年4月に消費税率を8%に上げることに伴い、今年9月末までに住宅の建築契約をすれば引渡しが来年4月以降でも5%の現行税率を適用する措置を設けた。このため駆け込みが起き、10月に反動が出た。
だが住宅・不動産業界で反動減におびえる声は意外と少ない。10月の注文住宅の受注額が前年同月比14%減だったパナホームの藤井康照社長は「年末に向けて例年並みの受注に戻る」とみる。
住宅金融支援機構が不動産アナリストらの予測をまとめたところ、2013年度の住宅着工件数は98万戸程度(12年度約89万戸)。14年度は87万戸と13年度から11%減るが、12年度に近い水準は保てる。消費税率が5%に上がった1997年度(96年度比18%減、95年度比10%減)よりは反動が小さいとの見立てだ。
来年4月からは反動の影響緩和策として住宅ローン減税が拡充される。10年間の税額控除は現行の倍の最大400万円になり、低所得者には現金給付も加わる。みずほ総合研究所の試算では、年収400万円の世帯と800万円以上の世帯は補助額が消費税の増税分を上回って増税後に住宅を取得する方が有利になる可能性もあるという。
JR大崎駅に近い品川区北品川5丁目。9月に発表された基準地価で都内の住宅地の中で上昇率トップだった。三井不動産レジデンシャルがそこで建設中の超高層マンションをこのほど発売したところ、初回分288戸が即日完売した。
住戸の引渡は15年の予定で、8%の消費税率が適用される。だが地下の発表直後から「先々資産価値が膨らみそうだ」などと問い合わせが増えたという。地下の先高感も住宅購入意欲を刺激している。金融不安が高まっていた97年と景気が上向いている現在とでは経済環境も異なる。
さらに増税直後の来年3月に向け、再度駆け込み需要が起きそうだ。10月末時点で首都圏のマンション在庫は4千戸弱。うち約4割がすぐに引き渡せる売れ残り物件だ。3月末までに買えば税率5%で済む。「建売住宅でも同じことが起きる」(大和ハウス)という。
むしろ悩ましいのは職人不足による労務費高騰だ。販売価格にそのまま転嫁するのは難しい。「工期を伸ばすことで建設コストの上昇を抑える」。大京は横浜市で建設中の大型マンションの工期を当初計画より3カ月延長した。その分、高い賃金を払って無理に職人を集める必要がなくなる。
反動減という量の問題だけでなく、採算という事業の質をどう確保するかが課題になりそうだ。
2013年12月3日 日本経済新聞