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2013年7月2日
カビの恐怖からあなたを守る8大原則
カビ対策の基本8大原則
1.夏に長引く風邪は感染症の専門医を受診する
2.カビは見た目と一緒に、ニオイで確認
3.風呂場からでるときは45度以上の湯で壁などを殺菌
4.台所は週1回アルコール除菌、塩素系剤は風呂場のみ
5.家電の換気機能を上手に活用
6.エアコン温度は下げすぎないで結露を抑える
7.新築住宅は意識的に換気する
8.毎日風呂に入って皮膚への感染を防ぐ
毎年必ず夏風邪をひき、咳やだるさ、発熱に悩まされ、薬を飲んでも良くならないが、秋口になると治る―。
「こんな症状の人は、トリコスポロンというカビ(真菌)による『夏型過敏性肺炎』の可能性があります。夏風邪と誤診されるケースが少なくありません」
帝京大学医真菌研究センター教授の槇村浩一医師は、そう指摘する。
カビがもたらす健康被害は、白癬菌による水虫やカンジダによる膣炎のような感染症が一般的だが、夏型過敏性肺炎は、トリコスポロンを原因とするアレルギー反応だ。
空気中に舞う大量のトリコスポロンの胞子を繰り返し吸い込むうちに、抗原として反応し、咳や発熱といった症状を引き起こす。槇村医師は言う。「カビの感染症は、病気や手術後などで免疫力が落ちた人がかかりやすい。しかし夏型過敏性肺炎は、トリコスポロンが多い環境にいれば、誰でもかかる可能性があります」
トリコスポロンが育ちやすいのは、常にじっとりと湿っていて、木の部分が朽ちているような場所だ。古い木造家屋の風呂場や洗濯機周りの壁、風通しの悪い押入れなどのほか、結露しやすいエアコンの内側が発生源になっていることもある。
夏風邪と酷似のアレルギー反応
さらに槇村医師は続ける。「多くのカビと同じように高温多湿になる梅雨時から夏にかけて一気に増殖する。それとともに症状を訴える人が増え、涼しくなって増殖が鈍る秋口に症状は改善する。仕事に行っている間とか旅行中とか、トリコスポロンが多い場所から離れると楽になります。炎症がおこる場所は違うものの、花粉症ととてもよく似ています」
順天堂大学総合診療科(感染症・細菌学)先任准教授の菊池賢医師は話す。
「夏風邪と診断されたのに、薬を飲んでも直らないので何軒も病院をはしごする人がいます。医師に、どういうときに症状がひどくなるかを伝えてください」
治療の基本は、まずトリコスポロンの多い環境から脱出することだ。日常的に接している限り、なかなか症状は改善しない。翌夏、再発する可能性もある。再発を繰り返すと肺の線維が硬くなる肺線維症を併発し、呼吸困難で死亡する恐れもあるという。
前出の槇村医師は、
「湿気で深い部分まで水分が染み込んだ建材など、トリコスポロンの発生源があるままだと、表面をいくら掃除したり殺菌したりしても、菌は減らせません。最悪の場合、リフォームや引っ越しなどの抜本的改善が必要になります」
とはいえ、健康な人に被害を与えるカビは、ごく一部に過ぎない。
「ただ、見た目やニオイで気持ちよく暮らせないといった心理面も大きいのではないでしょうか。カビ臭がする家の住人には、うつ病の発症率が高いという報告もあります。神経質にならない程度でカビ退治をしましょう」(槇村医師)
カビが育ちやすい環境は、1.温度が20〜30度 2.湿度65%以上の高温多湿状態だ。こうした条件が当てはまる場所を重点的に、カビの栄養になるゴミや石鹸カスなどをなくして換気し、生えにくい環境をつくることが大切になる。
週刊朝日2013.7.12