ご存じですか?
新聞・雑誌などから”気になる”情報をピックアップしています。
2013年5月3日
「流せる」トイレクリーナー、実は流れない?
「トイレに流せる」掃除クリーナーが、実は流れない? 消費者庁が昨年末、製品によっては不当表示を禁ずる景品表示法違反にあたる可能性があると発表した。多くのメーカーがあわてて改良を進めている。
ほぐれやすさ「合格」2製品
手軽にふき掃除ができて後始末も簡単。家庭に広まった「流せる」トイレクリーナーだが、国民生活センターには「詰まった」「ほぐれない」などの苦情がこの10年余り毎年のように寄せられている。
クリーナーの品質基準はない。そこで消費者庁は昨年、トイレットペーパーの日本工業規格(JIS)にあてはめて12社の15製品のほぐれやすさを検証。合格したのは花王「トイレクイックル」とLIXIL「トイレ用お掃除ティッシュ」の2製品だけだった。
花王と、検証後の昨年10月に「ネピアトイレットン」を発売した王子ネピアはホームページに「安心してお使いいただけます」と記載したが、多くのメーカーは対応に追われた。
「エリエールミチガエルトイレクリーナー」の大王製紙は「ほぐれやすくなるように改善してきた。自社基準で問題ない」(担当者)と釈明しつつ、トイレットペーパー規格での商品を生産し始めた。5月中旬に出荷予定。
「Agオレンジ除菌トイレクリーナー」などを出すT・H・Tも6月をめどに新発売できるよう改良を急ぐ。「トイレクリーナー」の協和紙工(愛知県)も規格に合うシートを開発し6月末に発売予定。原料価格が3〜4割高くなるため、1箱あたりの枚数を減らす。現行品も「流せる」という表示を除いて残すという。
新たな評価法 取り組む動き
消費者庁は自主改善の猶予期間を半年程度とする。「何も改善をせず不当表示を続ける事業者には、行政処分をする」と厳しい。
一方、高知県立紙産業技術センターの森澤純主任研究員は「トイレットペーパーとクリーナーでは厚さや形状も異なる。同じ規格をあてはめるのが妥当なのか」と問題提起する。
同センターはトイレに流す製品全般の流れやすさやほぐれやすさなどを評価できるシステムの開発に取り組むことにした。「流せる」とうたう商品は、お尻ふき、生理用ナプキンなどにも広がっているからだ。
業界団体の日本衛生材料工業連合会は「だれもが安心できる表示基準やJISができるような方向にもっていきたい」と話す。
何でも流すと下水道に負荷
だが、そもそも、何でも流そうとするのはどうなのか。水洗便器は「汚物とトイレットペーパー以外は流してはいけない」のが建前だったはず。衛生陶器最大手のTOTOは「便器の中で流れたとしても配管で詰まることもある」と言う。
LIXILは水洗便器を生産し、クリーナーもつくる。クリーナーの注意書きには、「燃えるゴミとして処理してください。水改性ティッシュですのでそのままトイレに流せます」。
日本トイレ協会理事の山本耕平さん(58)は「大前提を思い出して」と話す。「とけやすいとはいえ、物を流すのは下水道へ負荷を増やす。環境保護の観点からもいいことではありません。水に流しても消えてなくなるわけではないのです」
2013年5月3日 朝日新聞