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2012年9月8日
節電、我慢から活用へ 市民感覚「もはや常識」
「節電の夏」が終わった。原発に頼らなくても乗り切れたのは家庭や企業の努力が大きい。これから原発を動かす必要はあるのだろうか。政府や電力業界が原発再稼働を進める理由は、電力会社の経営や電気料金値上げというコスト問題が大きいことが浮き彫りになってきた。
93.7%――。電通総研が5月、全国1200人にインターネット調査をしたところ、「家庭で節電をしている」と答えた人が圧倒的多数だった。「照明器具のスイッチをこまめに切る」「必要時以外はテレビのスイッチを切る」「エアコンの使用を控え、扇風機を使う」など、様々な工夫をしている。「電力不足の問題がなくても節電を続ける」という回答も78.2%を占め、節電はもはや「常識」となっている。
関西の私鉄はこの夏、空調を抑えたり照明を間引いたりした。それでも南海電鉄に届いた「車内が暑い」「エスカレーターが止まっていて不便」といった苦情はわずか数件。担当者は「節電意識が浸透したため」とみる。
直接的な節電以外にも、消費者は少しずつ行動を変え始めた。
「節電が、お総菜の売り上げを押し上げた」と話すのは日本総菜協会の担当者だ。エアコンを控えると部屋が暑くなり、「揚げ物や煮物などの調理は嫌がられる」という見立てだ。コンビニも店頭調理する総菜を充実させ、「昨年の発売からヒットしている焼き鳥は、この夏も前年度比で10%多く売れた」(サークルKサンクス)。
涼しさを感じやすい衣料品やエコ家電も、昨夏に引き続き好調だった。さらに7月から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まり、自宅に太陽光発電装置をつける人も増えている。積水ハウスでは標準的なもので約170万円するが、7月までの半年間に新築した顧客の8割強が設置。今夏は「関西での関心も高まってきた」(広報担当者)という。
レジャーにも変化をもたらした。旅行業界ではこの夏、関西から旅立つ「避暑地ツアー」が人気だった。
JTBは首都圏向けだった信州への長期滞在型プランを、関西でも発売。スキー客が多い信州の夏はオフシーズンなので、宿泊費が1週間で1人2万円台からという安さもうけた。同社が7、8月に扱った関西発の旅行客は前年同期比で15%増。担当者は「関西から飛び出そうという心理では」とみる。
2012年9月8日 朝日新聞