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2011年7月16日
節電の夏 熱中症予防を ―エアコン、上手に頼る―
「もはやよしずを垂らし、夕涼みして夏をしのぐ時代ではありません」。そう話すのは、日本救急医学会で「熱中症に関する委員会」委員長を務める昭和大准教授の三宅康史さん(51)。環境省によると、東京周辺では30度を超える時間が20年前の2倍になった。三宅さんは「熱中症の特効薬はエアコン」と言い切る。
熱中症は高温多湿で汗がうまく蒸発しなかったり、体表近くを流れる血液が冷えなかったり、体温を下げる仕組みが十分働かずに発症する。
炎天下でのスポーツや肉体労働で、頭痛や吐き気を短時間で起こすこともあれば、日常生活で数日かけて症状が重くなり、死に至る場合もある。度重なる熱波に襲われた昨年は、室内で亡くなるお年寄りが急増して注目された。
特に危険なのは、体が暑さに慣れていない梅雨の中休みと梅雨明け間もない頃だ。日差しを避け、のどが渇く前にこまめに水分をとることが予防につながる。大量に汗をかいたら塩分も補おう。
ただし「持病で塩分や水分の摂取を制限されている人、体温を調節する力が弱い高齢者など『熱中症弱者』はエアコンに頼るしかない」と三宅さんは言う。「室温28度、湿度70%を超えたらエアコンの冷たく乾いた空気に触れる必要がある。体感ではなく、温度計と湿度計を部屋の目立つ場所に置いて目で確かめて」とアドバイスする。
さらに今年懸念されるのが「節電熱中症」だ。消費電力の大きいエアコンを控え、蒸し暑い状態が続くと、健康な人でも疲労がたまり、体調を崩しやすい。エアコンと扇風機を併用したり冷たいものを飲んだり、工夫して体を効果的に冷やしたい。電力消費が減る夜、エアコンを適切に使ってぐっすり眠るのも、翌日への暑さへの備えになる。
「夏の体調不良は、まず熱中症を疑って」と三宅さん。こむら返りやめまい、立ちくらみなど症状は様々だが、わずかでも異変を感じたら黄信号。衣服をゆるめて冷たい水を飲み、頭や首、わきの下、足の付け根(そけい部)などを氷や保冷剤で冷やして応急処置をしよう。意識がもうろうとしていたら、ためらわずに病院へ。
平成23年7月14日 朝日新聞(朝刊)